脳小血管病について知る

病気について

脳小血管病とは

脳小血管病(のうしょうけっかんびょう) は、脳の細い血管に障害が起こることで、脳梗塞や認知機能障害などを引き起こす疾患の総称です。
高血圧や加齢が原因で発症することが多いですが、病気に関わる特定の遺伝子の変化(病的バリアント)が原因であることがあります。

病的バリアント
当サイトでは、遺伝子の変化について「変異」ではなく「バリアント」という言葉を用いています。
遺伝子の変化は「バリアント」、病気に関わる遺伝子の変化は「病的バリアント」と呼びます。

遺伝性脳小血管病とは

病気に関わる遺伝子の変化(病的バリアント)によって発症する脳小血管病は、「遺伝性脳小血管病」と呼ばれます。
家族内で発症することが多い一方で、病的バリアントを持っていても必ずしも症状があらわれないこともあります。

治療と研究の現状

遺伝性脳小血管病のなかには、Fabry病のように有効な治療法がある疾患も一部存在しますが、多くは対症療法が中心であり、根本的な治療法はまだ確立されていません。
現在、病気の進行を長期的に観察するレジストリー研究や、治療薬の開発に向けた基礎研究が進められています。なかには臨床試験が進行中の疾患もあり、今後の治療法の確立に期待が寄せられています。

レジストリー研究
多くの患者さんのご協力のもと、病気の経過や症状に関する情報を集め、治療法の開発に役立てる研究のことです。

-主な遺伝性脳小血管病-

  • CADASIL
  • HRSVD
  • RVCL-S
総称 CADASIL HRSVD RVCL-S
疾患名 皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性(優性)脳動脈症 HTRA1関連脳小血管病 脳白質脳症および全身症状を伴う網膜血管障害
関連遺伝子 NOTCH3 遺伝子 HTRA1 遺伝子 TREX1 遺伝子
遺伝形式 常染色体顕性遺伝 常染色体潜性遺伝(CARASIL)
または
常染色体顕性遺伝(症候性保因者
常染色体顕性遺伝
疫学 259人1
軽症者、未発症者の頻度:不明
CARASIL:日本で 10 人以下2,3
国内外で 33 人4-8
症候性保因者の頻度:不明
日本で数人 9,10
国内外で数百人 11-13
発症年齢 個人差が大きいが、
40〜60 歳代で脳卒中を初めて
発症することが多い14
CARASIL
平均 29.5 歳(20〜40 歳)4
症候性保因者
平均 54.1 歳(29〜77 歳)4
30〜50 歳代 11
主な症状
  • 片頭痛 (前兆を伴うことが多い)
  • 気分障害(うつ病など)
  • 脳梗塞、脳出血
  • 認知機能障害
CARASIL
若年期の禿頭(とくとう) 、腰痛・脊椎症、認知機能障害、歩行障害
症候性保因者
CARASILより軽症で多様な症状
  • 視力低下や視野障害
  • 脳の血管障害、頭痛、けいれん
  • 各臓器の機能低下(腎機能障害、肝機能障害)
備考 指定難病 124
遺伝学的検査:保険適用
指定難病 123
遺伝学的検査:保険適用
詳細な説明 CADASILの詳細ページ HRSVDの詳細ページ RVCL-Sの詳細ページ

常染色体顕性遺伝は、病気に関わる遺伝子の変化(病的バリアント)を持つ親から子へ約50%の確率で遺伝する可能性があります。
一方、常染色体潜性遺伝は、両親がともに病的バリアントを持つ場合に、子へ約25%の確率で遺伝する可能性があります。
なお、遺伝子に病的バリアントがあっても、必ずしも発症するとは限らず、症状が出ない人(無症候性保因者)もいます。

常染色体顕性遺伝と常染色体潜性遺伝の遺伝形式

症候性保因者とは、対の染色体の片方に病気に関わる遺伝子の変化(病的バリアント)を持つ「保因者」のうち、実際に何らかの症状があらわれている人を指します。
一般に、保因者は無症状であることが多いですが、遺伝子の変化(バリアント)の種類や加齢、環境要因などによって症状があらわれる場合があります。


  • 2025年10月
    • 新潟大学脳研究所
    • 安藤 昭一朗
    • 国立循環器病研究センター
    • 齊藤 聡